2016年5月25日、曽野綾子 「オバマ大統領がヒロシマを訪問することになったが、去年は昭和20年の終戦から70周年
2016年5月25日、曽野綾子 「オバマ大統領がヒロシマを訪問することになったが、去年は昭和20年の終戦から70周年
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antiracism-info
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発言内容 | オバマ大統領がヒロシマを訪問することになったが、去年は昭和20年の終戦から70周年に当たるというので、第二次大戦の総括のような番組も、衛星テレビでしきりに放映された。
ことにナチの幹部だった人たちの戦後を描いたものなど、人間の本性とその限度を考えさせる実に重い内容をもっていて、私は番組が終わった後も疲れて気が落ち込んでいた。
人間になるという行為は、すべて知ることから始まるのだが、現実に大勢のユダヤ人たちを殺し、大量の死体の始末をするという任務にはナチの党員ですら、神経的に耐えきれなかった。それを救うために死と接触する部分をできるだけ減らそうとして、死の瞬間を見なくて済むガス室だの、死体の始末をできるだけ簡単に行える焼却炉の改造の研究などが、熱心に行われたという。
戦後捕まったナチ党員の責任者のほとんどが、自分は命じられたことをやっただけだ、という。軍というものは、そういうものだ。拒否はできなかった。だから結末を薄々知っていても、それを拒否はできなかった。それに自分のしたことは、直接彼らの死に関わることではない、と言う。ユダヤ人を町から駆り出してゲトーに入れただけだ、とか、特定の場所(実は強制収容所)に運んだだけのことだ、とか言う。
すべてのことの方途と目的を知っていたのは、ヒトラーほか数人だけだ、という言い方である。するとそこに、それはいいわけだ。命令を断ることはできた、という戦後生まれの外国の学者などが出てきて彼らを告発する。しかし私はそれも信じられない。
日本でも、現在の反戦主義者は、戦争中、召集令状が来ても、兵役を拒否することはできたろうなどと批判するが、あの当時そんなことは事実上は不可能だったという空気を、13歳の子供だった私でさえ知っているからだ。
オバマ大統領は「日本で謝れ」と言われたら決して来なかっただろう。日本人、ことにマスコミや進歩的文化人や学者は、最近すぐ他人に対して「謝れ」と言うようになった。しかし多くの日本人は、他人に強いて謝らせるという行為の虚しさと思い上がりの醜悪さとを知っていると思う。 |
発言者 | 曽野綾子 |
所属 | その他 |
所属団体 | 日本郵政社外取締役 |
発言日時 | 2016/5/25 |
発言場所 | 産経新聞 |
情報源 | 産経新聞 曽野綾子の透明な歳月の光 オバマ大統領の広島訪問 謝罪は求めず、事実のみ伝えよ |
掲載日時 | 2016/5/25 |
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事後経過 | |
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補足・解説 | |