反レイシズム情報センター(ARIC)は、2016年熊本地震での「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのヘイトスピーチと、小坪慎也市議によるその擁護について、署名キャンペーンを行っています。
4月14日の熊本地震発生直後から、ネット上では、1923年の関東大震災で起こった朝鮮人虐殺を再現するよう扇動する悪質なヘイトスピーチ(差別扇動)・デマが大量に拡散されました。
「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ」
「熊本の井戸に朝鮮人が毒を入れて回っているそうです! 皆さん注意してください!」
(http://togetter.com/li/962680)
1923年の関東大震災では、この同じデマを官憲が流し、率先して検挙・虐殺を行ったことが、市民による虐殺を促し、6000人ともいわれる朝鮮人が虐殺されたという歴史的事実があります。
地震の混乱が続く中でこのデマ・ヘイトスピーチが放置され、政府によって何の対処もされないことは、一般に被災者が飲み水を口にしづらくなるなどの悪影響を及ぼすだけでなく、在日コリアンはじめ人種・民族的マイノリティへのレイシズム(人種差別・民族差別)を煽動します。例えば差別や暴力の頻発を引き起したり、避難所での配給物資や施設利用などでの差別を助長させたり、マイノリティじしんが救助・避難所での支援を受けることをためらわせたりする恐れが十分にあると言えるでしょう。それらが人権侵害であるだけでなく、救助・避難・支援活動を妨げ、命にかかわる被害をさらに拡大させることは言うまでもありません。
さらに極めて深刻なことに、政治家がこのヘイトスピーチを公然と擁護しています。福岡県行橋市の小坪慎也市議が震災直後に公開した「「朝鮮人が井戸に毒」に大騒ぎするネトウヨとブサヨどもに言いたい!」なる記事には次のような記述があります。
「「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが飛び交うことに対しては仕方がないという立場である。」
「治安に不安がある場合は、自警団も組むべきだろう。(中略)しかし、疑心暗鬼から罪なき者を処断する・リンチしてしまうリスクも存在する。そうはなって欲しくないが、災害発生時の極限状況ゆえ、どう転ぶかはわからない。」
(http://ironna.jp/article/3143)
「朝鮮人が井戸に毒を入れた」が仕方ないと政治家が公言することは、在日コリアンはじめ人種・民族的マイノリティを差別しても仕方ないというメッセージです。しかも「罪なき者を処断する・リンチしてしまうリスク」を大前提にした上で「自警団」の組織化の必要を訴えることは、レイシズム暴力・虐殺は正当化されるというメッセージです。関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史を踏まえれば、この発言じたいが在日コリアンはじめ人種・民族的マイノリティへのレイシズムを煽動するヘイトスピーチであることは明白です。今回の小坪氏によるヘイトスピーチは、熊本震災の最中に、レイシズム暴力を煽動する極めて悪質なものであり、これを放置することは明確な人種差別撤廃条約違反にあたります(*国や地方の公の当局・機関が人種差別を助長しまたは扇動することを許さない。(人種差別撤廃条約 第4条(c)))。
熊本地震のような非常時における国と政治家の責任に、レイシズムが暴力に結びつくことを何としてでも抑制する責務があるはずです。私たち反レイシズム情報センター(ARIC)は、法務省に対し人種差別撤廃条約の義務を履行し以下のことを実施することを要請しました。
法務省に対して
・インターネット上などで頻発している「朝鮮人が井戸に毒を投げた」等のデマを在日コリアンはじめ人種的民族的マイノリティへのヘイトスピーチであると公認し、これを即時否定する公式声明を出してください。
・これらのヘイトスピーチについて、また避難所などでレイシズムが発生していないかどうかなど被害実態を早急に調査・報告してください。
・レイシズム被害を相談できるよう被災地で相談窓口を開設・周知してください。
・ツイッター社に対し、これらのデマの削除・アカウント停止を徹底するよう要請してください。
・小坪慎也市議(行橋市)のヘイトスピーチ擁護及びヘイトスピーチに対し、公式に批判する声明を出してください。
行橋市議会に対して
・小坪慎也市議のヘイトスピーチ擁護及びヘイトスピーチに対し即時撤回するよう要求してください。
・小坪慎也市議に対して、本事件に対する責任を追及し、辞職を含む厳正な対処をしてください。