2015年9月、京都大学生協で、留学生に対する差別が発覚しました。京大生協が発行している学生向け住宅紹介冊子において、紹介されている物件の半数ほどが、留学生は入居できないと表示されていたのです。
これは、家主が留学生・外国人の入居を拒否し、それを大学生協がそのまま表示していたという問題でした。留学生の多い国内の主要大学を調査したところ、京都大学のほか、立命館大学、同志社大学、東京大学の生協でも同様の問題があることが発覚しました。留学生が入居できないとされる物件は、京都大学生協の冊子では全物件393件中172件(約44%)、立命館では206件中103件(50%)、同志社では443件中215件(約49%)、東京大学生協の『minimini』冊子では、72件中61件(約85%)にも上りました。
ただ留学生・外国人であるということのみをもって、住宅を借りられないとすることは、人種差別撤廃条約で禁止されるレイシズム(人種差別・民族差別)に当たります。そして、大学生協がそのようなレイシズムを放置し、そのまま学生に配布する冊子で留学生差別を表示することは、レイシズムの助長・煽動にあたります。
・大学生協の住宅差別表示 是正キャンペーン
ARIC関西学生チームでは、これらの大学に対して要請書を提出するとともに、Change.orgで「京都大学生協は留学生に対する住宅差別をなくしてください!」と題して署名キャンペーンを行い、上記4大学すべてで改善してもらうことに成功しました!
change.orgのネット署名キャンペーン
https://www.change.org/p/京都大学生協は留学生に対する住宅差別をなくしてください!
・要請書
京都・立命館・同志社・東京大学の4大学の生協にたいして送付した、入居差別の是正を求める要請書です。こちらからご覧いただけます。
―京都大学生協:京都大学生協要請書 公開用
―立命館大学生協:立命館生協要請書 公開用
―同志社大学生協:同志社生協要請書 公開用
―東京大学生協:東京大学生協要請書 公開用
・京都大学生協における改善状況
12月14日付けで京大生協は声明「留学生組合員の皆様へのよりよい住まい事業の強化のために」を公表しました( http://www.s-coop.net/information_seikyo/017802.php をご参照ください)。留学生マークの廃止に加えて、差別問題の再発防止のための積極的な改善策も打ち出されました。また、同時に他の3大学も同様の声明を公表しました。
*各大学生協の声明
―京都大学生協:http://www.s-coop.net/information_seikyo/017802.php
―立命館大学生協:http://www.ritsco-op.jp/pickup/2015/12/post_363.html
―同志社大学生協:http://www.doshisha-coop.com/about_seikyo/organization/017804.php
―東京大学生協:http://www.utcoop.or.jp/news/news_detail_4008.html
また、これらの声明では差別を差別としてとらえていないようにも読める書き方がされていたため、京都大学生協と12月18日に話し合いを行ったところ、京大生協は「留学生入居可否」マークの採用それじたいが差別にあたることを認め、声明の改善策は差別禁止の原則をもとに行ってゆくことを明言しました(詳しくは https://www.change.org/p/京都大学生協は留学生に対する住宅差別をなくしてください!/u/14670278 を参照)。
この問題では、とくに「留学生入居可否」マークの撤廃だけでなく、京大生協が差別禁止の原則をルール化し、それに基づいて家主や留学生に接しようとする姿勢は高く評価されるべきです。レイシズム禁止法のない唯一の先進国である日本では、京大生協の取り組みは民間が反レイシズムのルール作りを国に先行して行うモデルケースになる可能性があります。そしてこのことは同時に、人種差別撤廃推進法をさらに進めた、国による差別禁止のルールづくりが喫緊の課題であることをも示すものでしょう。
私たちは今後も、京大生協と今後も話し合いを続け、声明が差別禁止の原則によって誠実に履行されるよう求め続けると共に、京大生協の積極的な姿勢をNGOとしてサポートしていきます。