相模原障がい者大量殺傷事件についてのARIC声明 障がい者へのヘイトクライムに断固抗議する


相模原障がい者大量殺傷事件についてのARIC声明

障がい者へのヘイトクライムに断固抗議する

2016年7月29日
反レイシズム情報センター(ARIC)

 2016年7月26日に神奈川県相模原市の障がい者施設で、刃物を持って侵入した男性によって、障がい者45名が殺傷され、うち19名が殺害される事件が起きた。
犯人は2月14・15日に、衆議院議長宛てに今回の犯行を予告する手紙を送り、はっきりと「私は障害者総勢470名を抹殺することができ」る旨と具体的な犯行方法を記した。しかも犯人は2月19日の措置入院の際に、「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」と語ったという。

以上の根拠から、この事件が単なる大量殺人事件に留まらず、障がい者への差別に基づいたヘイトクライム(憎悪犯罪)であることは明白である。

私たちはこの言語を絶する障がい者へのヘイトクライムに断固抗議する。

私たちはこの事件が、有力な政治家が確信犯的に繰り返すヘイトスピーチ(差別煽動)に煽動され、遊び半分で「朝鮮人を殺せ」「ホロコーストしろ」などと叫ぶ路上やインターネットでのヘイトスピーチが頻発する最中に起きたことを、深く憂慮する。かつてナチスが600万人ともいわれるユダヤ人を殺害した時、障がい者が真っ先に殺害/断種されたジェノサイドの歴史が示す通り、レイシズム(人種主義)は障がい者差別を正当化し、途方もなく強化するからである。

さらに犯人は障がい者抹殺を「お金」を持ち出して正当化している。今回のヘイトクライムが、「フルスペックの人権」や「ナマポ」などといった差別的レッテルを用いて、有力な政治家が生活保護受給者をバッシングすることで差別を煽動し、国によって公然と生活保護基準が掘り崩され、市場原理を持ち出せば生存権そのものさえ否定してよいとする社会規範が強化されつつある最中で起こされたことにも、私たちは深く憂慮している。

政治家は直ちに今回のヘイトクライムを非難し、「差別を止めよう」と社会に呼びかけるべきではないか。事件後数日経った現在も、有力な政治家のほとんどが沈黙していることに私たちは断固抗議したい。

日本政府は障害者差別解消法を拡充し、障害者権利条約が義務付ける水準において障がい者差別を禁止するとともに、人種差別撤廃条約が義務付ける包括的レイシズム禁止立法措置を可及的速やかに講じるべきである。ただでさえ今回のヘイトクライムは、犯行の五カ月以上も前に障がい者へのジェノサイドとして計画・予告され、警察がその事実を知りつつも犯されたという意味で、警察・国の責任は免れるものではない。

またマスコミは事件がヘイトクライムである側面を正面から報道すべきである。私たちはマスコミ報道が、ジェノサイドをも正当化する犯人の差別思想を無批判的に拡散し、二次被害を生むことを深く憂慮する。犯人の動機を報じる際には、何がどう差別であるかをも必ず報じるべきである。

私たちは今回のヘイトクライムが今後、日本政府によって十分に対処されず、そのことによって事件のヘイトクライムとしての側面が免責/正当化され、障がい者差別とレイシズムを助長・煽動する社会的効果を生むことを、最も強く危惧するものである。しかも犯人は日本だけでなく「世界には、8億人の障害者がいるが、その人たちにかかるお金を、ほかのことに充てるべき」と語ったという。日本政府が対応を間違えば、この事件は世界各地の極右やレイシスト(差別主義者)が理想とする象徴的事件へと「神聖化」する危険性さえ否定できないというべきだろう。

私たちは反レイシズムという立場から、差別を暴力に結びつける差別煽動の社会的回路を断ち切るために、引き続き活動を続けてゆく。

 以上

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